2007-01-01

言行不一致の必然

わが国の首脳は言行一致を目指すと言ったようだ。
しかし、いろいろと対立することの多い認知科学と精神分析でめずらしく意見の一致を見ているのが「人間の心は一様ではない」という点だそうだ。(吉田信彌「事故と心理」)
近代民主主義では言行一致は徳目であるとともに前提でもある。ところが、心は一様ではないとの人間観は、言行不一致ということである。明晰な自覚のもとで発した言葉でもそれと乖離した行動を人はしてしまう。うそをつくわけではなく、そう行動せざるをえない一面が多々あるというのが、精神分析を含む人間に関する近年の研究が達した一つの結論だそうだ。
昨年の交通事故の激減はこれらの研究の成果のひとつともいえるだろうが、日頃厳密に振り返ることの少ない自らの行動を考えても、そうなんだろうなという感想と、しかしそれでも目指すべきは言行の一致だという思いとが交錯する。